国土交通省の統計(2023年度)によれば、痴漢被害の申告は全国で年間およそ7000件。そのうち約9割が女性からの訴えであり、都市部の通勤時間帯に集中している。 満員電車での痴漢被害や性的ハラスメントの対策として、2001年から本格導入が始まった「女性専用車両」。全国の主要都市を走る路線では今や当たり前の存在となり、内閣府の令和5年版「男女共同参画白書」でも、通勤通学時の女性の不安を軽減する重要な施策として位置づけられている。 痴漢被害を受けやすい女性の安全を守る取り組みとして、一定の理解を得てきた一方、「男性専用車両」が存在しない現状には、以前から根強い疑問や不満の声があがっている。 特にSNS上では、「女性専用車両だけあって男性専用車両がないのは不公平」「性別によって扱いが違うのは納得できない」といった投稿が定期的になされている。「女性が安心して乗れる車両があるなら、冤罪を恐れる男性を守る車両もあるべきでは?」という声も少なくない。 一方で鉄道各社は、男性専用車両の導入には消極的だ。背景には、前述した通り、公共交通機関内の痴漢被害者の約9割が女性であるという統計があるからだ。被害を受けやすい層を優先して守るという考え方から、女性専用車両が存在している。 しかし、性別を基準とした対策が、新たな不公平感や問題を生むことも否めない。 たとえば、通勤ラッシュ時に空いている女性専用車両を見ながら、一般車両で身を縮める男性たち。両腕を上に上げるように立つ、片手はスマホ、片手は吊り革に、またリスクを避けるためにラッシュを外して早朝出勤を選ぶ男性もいる。「女性は守られていていいな〜」「こっちも毎朝神経をすり減らしてるんだよ」といった声は、決して少数意見ではない。 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘する。 「痴漢を減らすという目的は理解できますが、“女性だけが守られている”と感じてしまう男性が多いのも事実。痴漢冤罪を恐れて混雑車両や時間を避ける男性もいます。性別で対策を分けること自体が、別の緊張を生んでいるのです」 たしかに、通勤ラッシュ時、混み合う一般車両に詰め込まれる男性たち。その横を、比較的空いている女性専用車両が走り抜けていく様子は、決して小さくない「不公平感」を生んでいる。 また、見過ごされがちだが、加害者が女性で被害者が男性、あるいは同性間の痴漢というケースも存在する。こうした被害は表面化しづらく、被害者が泣き寝入りする例もある。公共の場で「性別によって守られ方が違う」ことは、本当に正しいことなのだろうか。 女性の中にも、女性専用車両を敬遠する人がいる。理由は「雰囲気が苦手」「同性だけの空間が逆に怖い」「過去に女性から被害を受けたことがある」など、単なる好みの問題では片付けられない深い事情がある。 もちろん、痴漢などの性被害に対する予防策は必要不可欠で、「女性専用車両」は存続させるべきである。ただし、「性別で分ければすべてが解決する」と単純に考えるのではなく、誰もが安心して電車に乗れる方法・対策を模索する視点と検討が、今こそなされるべきではなないか。 “専用”という言葉が分断を生むのか、それとも安心を与えているのか──。 【関連記事】「女性専用車両」に女性が「乗れない理由」とは。女から痴漢、男から逆ギレ…専用車両でのリアル では、「女性専用車両を避けている女性」が抱える、知られざるトラウマと葛藤に迫る。 取材・文/伊東克美 写真/Getty Images
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女性専用車両自体も違憲だと裁判で訴えられた際に「任意協力なので男性が乗っても構いません」と逃げて裁判に勝てたという代物だし、そもそも痴漢は別の車両に乗った女性を痴漢すればいいわけで、痴漢冤罪は男性が乗れるのが女性も乗れる車両しかない以上防ぎようがないという。 千歳烏山とか国会議事堂前とか見てると混雑差や出口の位置の問題もあるし、やっぱ防犯カメラ整備が完了した路線から順次廃止で良いのでは?
私は男ですが実際に被害があるわけだし女性専用車両はあって良いと思います。ただズルいと言うのではなく、冤罪を警戒するとか香水臭いのが嫌とかもあるので男性専用車両もあって良いと思います。 しかし男女は一緒に助け合って生きていくべきと思っているので、専用車両に乗らない女性の方が仲良くできると思っています。
朝の通勤ラッシュの時間帯は平等に女性専用車両と男性専用車両を半分ずつに分けたら良いと思います。 山手線は11両編成なので女性専用車両5両と男性専用車両5両、そして残りの1両は高齢者や車椅子の人、みたいな感じで。 通勤ラッシュの時間帯に限定したら、満員になって乗車出来なかったとしても次の電車はすぐに来てくれますから問題ないと思います。
名古屋市営地下鉄に久しぶりに利用しましたら、知らない間に女性専用車両が出来ていました。通勤時間帯だけ運用されているようですが、大阪環状線で初めて女性専用車両に乗ってしまい慌てて次の駅で移動した経験があります。 名古屋市営地下鉄にも、とうとう出来たかという感じですね。
この記事について非常な違和感を持ちました。女性専用車両とは女性が公共の交通機関で痴漢やセクハラに合わずに移動するという男性なら当然の権利を保証しているだけで、それは不当な特権とは言えないと思います。それを「不公平」と考える人が多いかのようなミスリードを誘う記事で不誠実だと思いました また女性の中にも「専用車両を敬遠する人がいる」という文脈は、多様な声の紹介に見えて女性専用車両の意義そのものを相対化・矮小化する効果を持っています。個々の不安や違和感の紹介が、あたかも制度全体を再考すべき理由になるかのように見せているのはフェアとは言えません 記事の結論は「女性専用車両を存続させるべき」としつつも、「性別で分けること自体が問題」とも言っており、結果として女性専用車両の正当性に疑問符をつけています。これは「両論併記」の体を取りながら、現行制度への不信を助長する非常に巧妙かつ危険なレトリックです
つくばエクスプレスにも朝は秋葉原方面の上り、夕方はつくば方面の下りに女性専用車両が設定されていて、南流山駅では朝の秋葉原方面に設定された女性専用車両がエスカレーターの位置のドンピシャに着くから、男性が乗り換えで急ぐ場合は、エスカレーターの位置まで壁とホームドアに挟まれて細くなったホームを1列で戻るか、階段付近に止まる車両に乗るかになるけど、停止位置をもう少しずらして男性にも配慮があっても良いのかと…
問題は乗れる車輌数に差があるのに料金が一緒となると、選択肢の少ない男性に対する差別になってしまう事です。 では女性専用車輌を有料にして解消すれば良いかと言うと、男性は有料でも選べる車輌数が少ないのでやはり差別になります。 結局はルールに定める事は出来ずに男性の協力によって成立してもらうしかありません。 多くの人はそれを理解していますが、たまに権利だと勘違いしてしまう人がいるのも問題です。
女性専用車両に乗ってるのは若い人よりも結構高年齢の女性が多い印象です。女性専用車両はホームの端のほうが多くて面倒なのであまり乗りません。おばさんのおしゃべりもうるさくて個人的には苦手かもしれません。変な痴漢とかがいなければ普通が一番いい。
「女性専用車」ということで、主語が最大であるところの”女性”は「権利は主張するが、義務は果たさない」のです。つまり、「社会がアタシたち女性のために専用車を設定してくれているのだから、女性は積極的に女性専用車に乗りましょう」とはならない。多くの女性は、「困っている女性がいるのなら女性専用車は必要。でもアタシは便利な中間車両を使うので乗らない」ということで、女性専用車には乗らないし、駅のアナウンスも「女性のみなさんは、出来る限り女性専用車にお乗りになるようにご協力ください」とは言わない。男性にだけ法的根拠も何もない「協力」を求めることと対照的である。 「困っている女性」がいるのなら、まずは女性同士で協力し合おうよ。その姿勢を見せるだけで、男性だって「理解」が深まるんだし、かつ「簡単なこと」なんだよ。でもそうならないのは「権利は主張するが、義務は果たさない」ということなのです。
あくまで男性の任意協力でやっているもの 法律的にも女性専用車両に男性が乗ってはいけないとはなっていない 混雑を回避する方法が女性にはあるのに男性にはないというのは不公平と思われるかもしれない しかも一部女性が男性の協力を当然みたいに振る舞うからなおさら反感を生む
引用: https://news.yahoo.co.jp/articles/20c577d29c02248228560a5b261c26a2a9786a03
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