どうして北方領土問題は遅々として進まないのか。前駐オーストラリア特命全権大使の山上信吾さんは「最大のミスは安倍政権下でロシアに『二島返還でも構わない』というシグナルを送ってしまったことだ。外務官僚は辞表を出してでも安倍総理を止めるべきだった」という――。 ※本稿は、山上信吾『国家衰退を招いた日本外交の闇』(徳間書店)の一部を再編集したものです。 ■苦労にまみれた北方領土交渉 少し距離を置いて長い目で見てみれば、そもそも北方領土交渉には、関係者の苦労と涙にまみれた積年の歴史と経緯がある。 第二次大戦後に日ソの国交を回復したのが1956年の日ソ共同宣言だった。 そこには、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」との条項がある。 平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記しているのである。 日ソ共同宣言では、これら二島の返還にしか言及がないが、歴史を紐解けば、日本こそがロシアに先んじて北方領土を発見・調査し、19世紀初めには歯舞、色丹のみならず国後、択捉を含む北方四島の実効支配を確立し、19世紀半ばまでに、択捉島とウルップ島との間に両国の国境が成立していたという事実がある。 具体的には、1855年に調印された日露通好条約第2条には、次の規定がある。「今より後日本国と魯西亜国との境『エトロプ島』と『ウルップ島』との間に在るへし『エトロプ』全島は日本に属し『ウルップ』全島夫より北の方『クリル』諸島は魯西亜に属す(後略)」。 ■北方四島は日本の領土であり続けた その後、1875年に締結された「樺太千島交換条約」では、樺太全島がロシアに属することを認める一方で、千島列島中最北の「シュムシュ島」から前記の「ウルップ島」に至るまで18島の名前を明記しつつ、日本に譲ることを認めているのである。 すなわち、北方四島については常に日本の領土であり続けたのであり、一度たりとも他国の領土になったことがないのだ。まさに、「日本固有の領土」なのである。 こうした史実があるからこそ、歯舞諸島と色丹島の二島のみに言及している上記の条項を盛り込んだ日ソ共同宣言が作成された後であっても、東京宣言、クラスノヤルスク合意、川奈提案、イルクーツク声明等々、四島返還要求を貫くための苦労を重ねてきたのだ。それが戦後の日本外交の軌跡だった。 まさに、一歩一歩地歩を回復し、不法に占拠された領土を取り返していく、そうした努力の積み重ねだったのだ。
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結局、国際社会では、力あるものが正義なのでしょう。 東側諸国であるロシアが西側諸国の日本に譲歩するとは到底思えない。 それを外交で成し遂げようと思えば、一体どれだけの事を水面下でしなければいけないのか。 今の日本の政治家や官僚に、ロシアの政治家や官僚と交渉する実力が有るのだろうか。 それにこれから日本は少子高齢化により国力が下がって行く上、外国人を受け入れれば国の治安にも影響が出て来る。 この問題を先送りすれば、ますます4島を取り戻す事が困難になるのでは。 懸念する材料は沢山有るけど、もし石破首相が4島を取り戻す事が出来れば大金星だと思う。 けど、難しいでしょうね…。
経済がガタガタだったソ連崩壊直後のロシアなら4島返還し日本と貿易をという動きはむしろロシア側のほうが活発だったのに、アメリカの顔色うかがっておじゃんにしたのは日本だし。 現状一括変換なんて無理なのだから、取り敢えず2島返還からって方向は間違ってないと思います。 宣伝って訳じゃないけど、ロシアの事に関しては佐藤優さんの書籍はだいぶ面白い。
このころの交渉のニュースを見ている限りはたしかにボリス・エリツィン大統領時代のロシア大混乱期に二島返還のチャンスがあった。そのときには日本側が四島返還にこだわってチャンスをつぶしてしまった印象だ。そのあとプーチンが大統領になると強権政治でロシア国内が安定してくる。安倍元首相が二島返還でもいいと言い出した時は手遅れだったのだ。次の返還のチャンスはロシアが完全に崩壊して極東地域がロシア人以外が支配するところとなり、北方4島のロシア人が完全自治と引き換えに日本の主権を認めてもよいと希望する場合くらいだろう。(それでもロシア系住民に莫大な地方交付金を取られるから国益にはならないだろうが)でもそれも他力本願だ。日本がやれるとしたらロシアと戦っているウクライナの戦争継続を支援するくらいだろう。
当時の谷内国家安全保障局長がロシア側から「もし、二島返還したらここに米軍を置かないか?」と問われたら「置かないという保証はできない」と正直に答え、この話が流れた過去がある。これは致命的だったよ。 プーチンとしては安倍さんのときに本気で領土問題を解決したかった。しかしここで上記の失言があったが日本は事実上米国の保護国ということを改めて思い知らされた。
日ソ共同宣言はただの覚書とは違う。締結当時にソビエト連邦と日本の政府と議会で批准承認されている。国際条約と同じ意味合いを持つ。それをひつくり返すのは民主国家のやることではない。締結時にアメリカ政府の圧力で、いつのまにか日本政府は2島返還から4島返還に変節してしまつた。日本人にはあまり知られていないが、ヤルタ協定やサンフランシスコ講和条約の経緯を踏まえて、4島返還は連合国であり日本の現在は友好国であるイギリスやフランスからも余り支持されてはいない。多分ロシア政府は日本政府の変節で、大きな不信感を持つている事は間違いない。外交は双方向で考えなければいけないものだ。安倍総理のスタンスは全く正しい。それをひつくり返すのではなく、共同宣言の正当性を現在のロシア政府に認めさせるのが、日本政府の正しい在り方だ。
この元豪州大使の方の発信を読んでいると、「外交のプロ」的意識が高いのはわかりますが、ちょっと「自分の考えが絶対正しい」と思いすぎじゃないでしょうか? 外交はベストは無理でもベターを追求する世界だと思いますが、この方はベストを言い募り、ベターを批判する。この記事で言えば、今、現実問題として北方領土のことに力を注力出来るのでしょうか?
元外務官僚の発想は分かる。1部の人たちの主張に沿っている。けど、戦争の結果現状がある、と主張するロシアに対して、2島先行返還を主張しても事態が動くならそれも選択肢だと思う。2島返還に際して、ロシアは当然領土問題はこれで終わりだと主張する。日本は、日中共同声明と同じように、ロシアが主張したことは尊重するが同意はしないと言う文言で決着を図る。これで押し通しても良いではないか。北方四島は日本固有の領土なのだ。
どうせロシアは1島たりとも返す気はないだろう。 改めて4島一括返還を要求すればよい。立ち戻れない理由はない。トップが替われば政策が変わるのは普通のことだ。 アメリカや韓国のように180度変わることも珍しくない。 100年後、200年後には状況も変わるかもしれないのだから、正当な権利を主張し続ければよいと思う。
勇ましい事を言う人も居るが、あの島の為にロシアと戦争状態になって何万人も死ぬなんて受け入れられる国民は少ないと思う。 話し合いではどうにもならないが、話し合いをするしかない状況だよね。
北方領土が返還されたとしても、千島列島や樺太が日本になったとしても、現地のロシア人はどうなるのか?ロシア文化が浸透した極寒の離島に日本人が望んで移住するだろうか?
引用: https://news.yahoo.co.jp/articles/f79baf4bcdfcb82cfadac857e667882eb975b1d8
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