トランプ米大統領が23日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を承認する意向を明らかにした。大統領選などに影響力を持つ全米鉄鋼労働組合(USW)の計画への反対で政治的な壁に阻まれていたが、トランプ氏の審判のてんびんは、米国に巨額投資と雇用をもたらす日鉄の提案の実利に傾いた。 「これ以上に米国の鉄鋼業を強くする道があるとは思えない」 計画の発表から約1年半。この間、日鉄の橋本英二会長はこう述べ、一貫して計画が経済的にも安全保障上も米国にとって最良の選択肢だと主張してきた。国家安保を理由にバイデン前政権が計画阻止を決定した際も、決定の無効を求めて訴訟まで起こした。 トランプ氏は、大統領就任前には労組票を意識して「私なら即座に阻止する。絶対にだ」と計画に反対していた。だが、就任後の4月、一転して対米外国投資委員会(CFIUS)に安保上の審査のやり直しを命じて、流れが変わった。 日鉄にとって焦点は、USスチールを完全に傘下に収める100%買収を勝ち取れるか否かだった。トランプ氏は日鉄の計画を「投資」と呼び出資を評価する一方、米国の製造業を代表する象徴的な企業であるUSスチールは「日本に渡ってほしくない」とも発言し、完全買収には否定的な姿勢を見せていたからだ。 再審査に入っても、日鉄の今井正社長は「出資するからにはリターンがなければならない」として、投資効果を最大限に得られる完全買収を目指す姿勢を変えていない。米政府が正式に承認する計画は明らかになっていないが、日鉄はトランプ氏の決断を歓迎しており、同社の方針が認められる方向とみられる。 トランプ氏が日鉄に歩み寄った背景には、計画を阻止すれば、トランプ氏が掲げる「米製造業の復権」に逆行する現実があった。 トランプ政権は、高関税政策で国内の鉄鋼業界を保護している。 しかし、USスチールの2025年1~3月期決算は2四半期連続の赤字。日鉄に対抗し、USスチール買収に名乗りを上げていた米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスも今月、業績低迷で生産設備の休止などの合理化を公表し、「関税だけでは、強い米製造業の復権は難しい」(今井氏)ことが露呈している。 そもそも、緊密な同盟国の日本の企業による買収に安保上のリスクはないと言っていい。日鉄が完全買収にこだわるのも、生産性が高く高品質の鉄鋼を製造できる特許技術などを移転して、USスチールの競争力を抜本的に強化するのが目的だ。日本が技術力で米製造業の復権を後押しする日米鉄鋼連合の実現に本来、トランプ氏が反対する合理的な理由は見当たらない。
コメント 10件
日本製鉄もUSスチールの会社名は残すとか、取締役会の構成とかで譲歩したようです。 トランプ大統領もよく話を聞いたら悪い話ではないということがわかったのではないでしょうか。 日鉄も韓国の浦項、中国の宝鋼に続く国家間大型投資になります。 日本製鉄には世界最大市場で世界最高品質の鉄鋼製品をつくって欲しいものです。
先日NHKでもやってましたが、日本企業が関税対策で米国に工場建設する為に、従業員を現地募集しても製造業の従事経験者がほとんどおらず、応募してきたのも全く必要人数が足らなかった上、採用したのも半分以上が早々に退職してしまうという状況に至って、工場の建設稼働の目途が全く立っていないという実情を知らせていた。 米国民の多くは自国の製造業に見切りをつけていてすでにスキル転換を済ませているのが現状で、自動車や鉄鋼に”しがみついている”のは、過去の栄光だけに頼っていて、スキル転換もできない労働者ばかりで、しかもスキル転換さえできないレベルの労働者がほとんどという事なんでしょう。 従事する人材が存在しない中で、米国の製造業を復活させるのは無理ですよ。 しかもそこを移民に頼るわけにもいかないんですし。
これからの製鉄の肝は電磁鋼板の高度化と原価低減だ。 企業規模の大小、かっての市場シェアは ある意味関係がない。 中国も電磁鋼板を作っているが、日鉄とは似て非なるものだ。日本企業にアメリカ同志企業が結束すればコストダウンが進む。USスティールの首脳は それを理解していたことが結果を示した。
理念重視のバイデンに対して自身の支持につながるかと言う計算を優先するトランプになって、可能性が高まるのかと思ったら、ついにトランプが応諾しましたね。 最近はウクライナの対応とか関税の対応とか自身への逆風も強まっている中で、日鉄USスチールの話は自身の支持の拡大につながると判断したのでしょう。 ただ、日鉄も巨額な投資負担を抱えることになるので、PMI含めて今後の経営手腕が問われることになる。
これの争点は完全買収なのか 半分投資半分買収みたいな中途半端なものなのか これをしっかり見極める必要があります 日鉄はUSスチールを100%完全子会社化したいのです 少しでもそうならなければ(100%完全子会社化できなければ) 日鉄にメリットがなくなります
日鉄の粘り勝ち。バイデン政権時代には訴訟も辞さなかったことで本気度は何より伝わっていたと思う。 なにより、自国にとって重要なUSSを再生させるには日鉄の計画に乗るしかない…というのは、辛いところだろう。 今回は日鉄がUSSを買収したが、数十年後に日鉄がどこかの国の鉄鋼会社に買収されるかも…と考えると忸怩たるものがある。 名前を変えないこと、取締役会の構成で譲歩すること、何より追加投資がトランプを唸らせたのだろう。 素晴らしい交渉だったと思う。
日鉄がトランプ大統領の決断を称賛している以上、完全な買収となると思われる。 パートナーシップと言っているのは、米国民の意を汲んでacquisitionといわないだけ。 橋本会長すごかったなあ。 まずは一枚岩でこの買収に尽力した日米の両経営陣に敬意を表したい。
おそらくですがUSスチールは日本製鐵と違い自動車などに使う高級鋼板など高品質の製品を造ることが出来ないと思います。日鐵さんは強い姿勢で交渉していたと思いましたが、自社の持つ優れた技術をカードにして来たのではと思います。やはり技術の流出などを考慮すれば100%に近い資本比率を持たないといけないと思うのは自然の流れでは。米国にしてみれば進出されるメリットがやっとわかって来たのかなと。日本企業と米国政府の交渉で日鐵はかなりの譲歩を引き出しのですごいなと思います。鉄鋼関係で仕事をしていなかったのですが日鐵出身の方の講義をお聞きした時に「鉄は国家なり」との言葉を思い出しました。関税問題の政府交渉も頑張ってほしいと思います。
日本製鉄とUSSのトランプ大統領への敬意表明は、変幻自在、朝令暮改のトランプの翻意を防ぎたい表れです。 しっかり政府も後押しして、まだ反対する米組合などの声に惑わされず、日本製鉄しか米国鉄鋼を支えられないことを念押ししていきましょう。 日本製鉄の強力な前進は、九州地区工場など全国の工場、社員の士気向上につながっています!
日本製鉄とUSSの合併で生産能力は、数字上世界3位だが、将来的なシェアを10年後で予想すると第一位の中国と同等に成長している可能性がある。その後は完全に日本製鉄とUSSの独壇場になるでしょう。特に軍需での成長は加速度的に飛躍するはずです。 EUや中東での需要は完全に手に入ると予想します。 民需での船舶に限っても今の倍の需要が見込まれます。 トランプ政権が犯した関税の失敗は、日本製鉄によって帳尻が合うことになるでしょうね。 後は日本政府がどこまでやれるか? 特に自動車関連が本丸です。
引用: https://news.yahoo.co.jp/articles/2dbde79ee533b553a6f2598abf73916a20222749
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